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脳内イメージと映像

脳内イメージと映像 吉田 直哉 (著)
脳内イメージと映像

読破

俺は大学に入学していきなりドキュメンタリー映像を作って、「自分でも映像作れるんだ!」と興奮し、 その後もいくつか映像作品を作り、そして今も作り続けている。 さらには、今までの映画的、TV的な映像ではない新しい表現手法を可能にできるものとして、 moo-pongという道具を作ったりしている。 というわけで、俺にとって「映像」というのは自己表現のひとつであり、研究の対象でもあるわけだ。 そのような前提のもと、この書を読む。

著者の吉田直哉さんはNHKで「日本の素顔」などのドキュメンタリーを作ったその道の草分け的存在の方。 本書では我々が頭の中に抱く主観的な「脳内イメージ」と、表現手法としての「映像」との関係を、 「現実」、「言葉」、「音楽」、「物語」などといった切り口で分析し、また新しい表現のあり方を提案している。

面白いのは最初の導入部分が著者の”臨死体験”から問題が提起されているところで、 そこでぐっと惹きつけられる。 そして、一番この本で魅力的で、自分にとっても大きな課題として再認識した部分があるので、 そこから一部引用する。

…ところが、その晩はじめて足を踏み入れたソニービルのマキシマムで、
はじめてお目にかかった井深氏からうかがった話は、
まったく私の意表をつくものでした。

われわれは、なにか大きな忘れものをしてきたのではないでしょうか?

(中略)

(井深氏)「モノを追求して、心を忘れてきたのは、映像も同じだと思う。
モノしか写さず、心の中のイメージを映し出そうとしてこなかった。
それにふさわしいハードも、まったくつくれなかった。…これではいけない、と思う。
映像にも、ニューパラダイムが必要なのではないだろうか」

著者は本書の中でいくつかの「ニューパラダイム」の挑戦について記述しているが、 まだ不十分なことだろう。しかし、今後ハードの発達、そして通信との融合も相まって新たな「映像」が現れることだろう。 これこそが、俺の(一生続くかもしれない)研究課題だな。 というわけで、なかなか思慮深く面白い本である。 映像を作る人だけでなく、映像を見る人、TVを見る人、つまり全ての人にもお勧めできる本である。